昨年NHKスペシャルで放送された「徹底解明100歳の世界」ご覧になった方いらっしゃいますか。非常に良くできた興味深い番組です。放送日は2016年10月29日でした。
世界のセンテナリアン(100歳以上の健康長寿者)の秘訣について調査されたものです。誰もがやり方次第で健康長寿を実現できるかもしれないという、とても前向きな話です。年をとることがポジティブにとらえられるような、元気がもらえる内容です。
私は2ヶ月前体調を崩したことで、最近特に「健康で暮らす」ことについて考えるようになりました。そこでこの番組のことを思い出し録画を見返しました。
今日は、その中で特に興味深かったこと、考えたことについて書きます。
NHKオンデマンドでも見られますので、ぜひご覧になることをお勧めします。
NHKスペシャル | あなたもなれる“健康長寿”徹底解明 100歳の世界
この記事の目次
大事なのは健康で長生きすること

この番組ではたくさんのセンテナリアンが出てきます。100歳を超えても頭も身体も元気で、生き生きと暮らす高齢者の姿に非常に驚き、健康で長生きすることの素晴らしさを実感しました。
例えば、田谷きみさんは101歳、一日10時間和菓子屋で接客からレジ打ちまですべて担って働かれています。とても明るく楽しそうです。
食事は1日3回いつも決まった時間。野菜中心で好き嫌いなく完食です。見た目も若く認知機能も高い。 こんな感じで年をとりたいと思います。
キーは慢性炎症を防ぐこと

キーワードは「慢性炎症」です。
慢性炎症は、ケガをした時に起きる急性炎症とは異なり加齢と共に徐々に進む自覚症状がほとんどない炎症です。
多いと、糖尿病、動脈硬化、肺疾患、心疾患などの様々な加齢疾患を引き起こします。少ないと、疾患の発生を抑えられ、臓器を良好な状態に保てます。
進行度は人間ドックで測定される「CRP値」で測定が可能です。101歳の田谷さんの値はなんと10分の1でした。
慢性炎症を抑えることが健康長寿のカギを握ります。
慢性炎症が低いのは特別な家系だからではない

10万組の双子の研究の調査結果によると、「同じ遺伝子でも寿命には大きな差が生じる」ことが分かりました。遺伝要因25%、環境要因が75%。
「遺伝子だけで運命が決まる訳でない」→「誰もが健康長寿が実現できる可能性がある」
これは非常に勇気づけられます。
慢性炎症をどう防ぐか。まずは食事の研究から。

センテナリアンが集中的に多い長寿のホットスポットの調査より。
地中海食プロジェクト(地域により効果のある食品は異なる)
世界の研究者から注目されている長寿地域の食事、地中海食。オリーブ、ナッツなどの地中海食を600人の人に食べてもらい経過を調査した「地中海食プロジェクト」の結果です。
全体的には、炎症の数値は確かに低くなりました。魚、オリーブオイル、ナッツ、野菜、これらに含まれる脂肪酸や、ポリフェノール、リコピンなどの炎症を抑える効果があったと考えられます。
しかし、人種、ライフスタイル、性別、生活習慣など様々な要因によって効果のあるなしが異なることも分かりました。
中国の研究から(腸内細菌が注目されている)
95人のセンテナリアン。この方々の腸内細菌は、どの地域の人とも異なることが分かりました。腸内細菌は長年摂取した食べ物によって異なります。それが効果が国によって異なる理由の一つと考えられています。
日本食の典型例(炎症を抑える食事が大事)
センテナリアンの多い日本の食事も良いとされています。共通する点は、炎症を抑える成分が多く含まれることです。
<日本食の良い点>
魚 EPA、DHAが多く含まれていて慢性炎症が抑えられる
ひじき、だいずの煮もの、みそ 良質のたんぱく質、ポリフェノール→炎症を抑える
<105歳 日野原重明さん(医師)の食事>
・ジュースにオリーブオイル
・大豆顆粒をまぶしたバナナ
・ミルクコーヒー
・動物性脂肪は控え魚を中心に色のついた野菜をよく食べる
・一日1300キロカロリー
若い世代にとってはカロリーが少し少な目ですね。
ひとつの成分だけで全てを賄うものはなく、バランスよく食べることが大切です。
身体活動について(微小循環の重要性)
イタリアサルデーニャ島は世界一男性の長寿率が高い地域です。センテナリアンの男女比1:1(ちなみに日本は1:9)。この地域は急こう配な地形で1日あたりの歩行距離8km、つまり身体活動量が非常に多いのです。
特に 暮らしの中に織り込まれた負荷の強い動きが多い。
また、この地域の人たちは90歳になっても働いています。やはり、ここでも年をとっても働いている方が長生きされていますね。
さらに、「微小循環」が重要です。
毛細血管の中で起きている目に見えないレベルでの細かな血流のことです。慢性炎症にかかわる溜まった老廃物を回収する役割が注目されています。
長寿地域の方の微小循環はどの地域の方のものよりも優れていました。
日野重明先生も、なるべく階段を上がり、軽い腕立てやストレッチなどの運動を続けられています。平坦な道だけではだめだそうです。毎日の暮らしの中に一定の不可を与えることがポイントです。
私も筋トレは精神的な働きに影響することは日常生活で実感しています。炎症、健康長寿の観点からも効果があると知り、更ににやる気がでました。
こころの持ちよう

いきがいを持つ
次はアメリカのセンテナリアン。105歳の現役理容師に学んだことです。
この方は105歳で生き生きと現役で仕事をされていて、年をとってより安定感が増したそうです。「お客さんの喜ぶ顔を見るのが生きがいだ」と言っていました。
散髪の手さばきもなかなかのものです。仕事を非常に楽しんでいます。
人の満足感と炎症との関係の研究
「日々の幸せや人生での充実感」と「血液」の関連を調べた研究があります。CTRA遺伝子群は、人がなんらかのストレスを受けた時に働きを強めます。満足感を得るとその働きが緩まります。
CTRA遺伝子群を調べることで「満足感は慢性炎症をコントロールする役割を持つ」ことが分かりました。
ただし満足感の種類によって異なる

ただし、満足感を得ているのに炎症が進んでいる人がいました。
<炎症を進めるタイプの満足感の例>
・食べたいだけ食べる。
・むやみに買い物をする。
・快楽型。自分の欲求を満たすことで得られる満足感。
<炎症を抑えるタイプの満足感の例>
・ボランティア活動
・家族を大切にする
→つまり、生きがい型(人のために生きる・社会に貢献する姿勢)が健康長寿に結びついています。
※行動そのものよりも、その動機が問題です。例えば「自分のために買い物をする」「人のために買い物をする」とでは効果が異なります。
満足感の違いに遺伝子はとても敏感です。
人類は社会的な集団生活をして生き延びてきました。人間の脳や神経は社会につながり、お互いに助け合うよう生物学的にプログラムされています。
また、同じことをするにも、「人にいい影響を与えたい」と考えることが大切です。
生きがいを感じる人と感じない人は同じことをやっても違います。
・・ということは、仕事や家事も生きがいを感じながらやった方が自分の身体にもいい影響を与えられるということですね。「プログラミングされている」という考え方に非常に感銘を受けました。そして嬉しくなりました。
年をとるほど豊かで幸せな気持ちを実感できる
最後に、更に嬉しいお話がありました。
「人は年をとるほどに今が幸せと感じるようになる」ということも紹介されました。センテナリアンは、「老年的超越」と言われる独特の心境に達することが分かってきました。
人は70歳をすぎると身体機能は衰えていきます。しかし一方で80歳を超えたあたりから今の暮らしを肯定的にとらえる力が高まります。
高齢になっても衰えない脳の部位「全体状皮質」の機能によります。これにより人間の感情は最後まで保たれます。
良い印象の写真、悪い印象の写真、若者はどちらも記憶、ところが高齢者は良い印象の写真をよく記憶し、悪い印象の写真は記憶しないという結果が現れました。高齢者が長い人生経験を得て到達する独特の心理状態だと言われます。
気が付いた上で、あえて違うことに目を向けている。人生の時間が残り少ないことを脳が意識して、自然とポジティブなものに目を向けるようになるのです。一人寂しく過ごしているかにみえても実は豊かで幸せな暮らしを送っているお年寄りも多いのです。
自分も年をとってきたな、衰えてきたな・・と落ち込むことが多かったのですが、これらのセンテナリアンから見たら私なんてまだまだヒヨッ子ですね・・。
どう乗り越えていくか
年をとることは身体機能は衰えてネガティブなことが多いようですが、幸せを感じるセンサーは発達するということなのでしょう。
今は非常に幸せを実感されている日野原先生も100歳までは非常に辛いことがあったそうです。年をとって人生の在り方がまったく異なりポジティブなものが生まれてきたそうです。
先生をお話をお聞きして、年を悪いことばかりではなく素敵なこと、そう思えました。
一方で、年をとることで鬱や様々な問題を抱える人も多いことも事実です。どうやって老齢期を乗り越えていくか、高齢社会がさらに進む日本ではこれらの研究は特にキーを握る重要なものであると考えます。
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